Fantasticalと純正カレンダーの違い|Macで有料に移る前の判断軸
Fantasticalと純正カレンダーの違いを調べ始めるきっかけは、たいてい「回らなかった1週間」です。会議と会議が場所違いで連続していた、繰り返しの予定を1つずらしたら他の3つが崩れた、予定表としては正しいのに朝8時の自分には何の役にも立たなかった。そこで、月額を払ってFantasticalに移るべきなのか、それともDockに最初から入っているカレンダーで足りるのかを決めたくなります。
結論から書くと、この2つの差は宣伝文句から想像するほど広くありません。差が出る場所は決まっていて、料金の形・入力の速さ・表示の切り替え・移動時間の扱いの4点に集まります。ここでは、その4点がそれぞれ誰の役に立つのかを分解し、機能表ではなく自分の失敗の型で決められるところまで持っていきます。
macOSのカレンダー選びが「有料か標準か」の二択になった背景
Macのカレンダーアプリは、この数年で価格の形が大きく分かれました。買い切りで売っていたアプリが年額の定期購入に移り、無料で配って一部機能を有料にする形が主流になっています。Fantasticalも同じ流れの中にあり、ダウンロード自体は無料で、機能の一部がFantastical Premiumという定期購入の内側に置かれています。
この変化があるので、比較の入口が「どちらが高機能か」ではなく「毎年払い続ける価値があるか」に変わりました。定期購入は単体で見れば重い金額ではありません。重くなるのは、他の定期購入と並んだときと、使う頻度が落ちても自動で更新され続けるときです。1日3件しか予定が入らない人と、1日8件の予定を3つのアカウントにまたいで持っている人とでは、同じ機能の値打ちが何倍も変わります。
もう1つの背景として、macOS標準のカレンダーが以前より充実したことがあります。かつては有料アプリだけの売りだった機能のいくつかが、いまは標準側に入っています。ここを知らないまま比較すると、すでに持っているものにお金を払う判断になりかねません。まずは標準側の現在地から確認します。
純正カレンダーが最初からできること
macOSに付属するカレンダーは、追加費用なしで使えます。そして、機能を絞った簡易版ではありません。
- iCloud、Google、Exchange、CalDAVのアカウントを「インターネットアカウント」から追加できる。仕事のGoogleカレンダーと個人のiCloudカレンダーを同じ画面に並べられる
- 日・週・月・年の各表示、カレンダーごとの色分け、通知、繰り返しの規則、参加者の招待、添付ファイルに対応している
- 新規イベントの入力欄に「木曜15時 打ち合わせ」のような文で書くと、日時として解釈して予定を作る
- イベントに移動時間の項目があり、開始前の時間を確保して、通知を「出発する時刻」に合わせられる
とくに後半の2つは、有料アプリだけの機能だと思われがちですが、標準に入っています。話し言葉に近い文で予定を入れられることも、移動時間を確保することも、追加のお金なしで試せます。
弱いのは、表示の作り込みと、タスクとの同居です。表示するカレンダーの切り替えはサイドバーのチェックボックスなので、顧客向けの見え方と家庭向けの見え方を行き来するたびに何度もクリックすることになります。リマインダーは別アプリなので、やることと予定が1つの画面に並びません。文の解釈も、単純な言い回しは通りますが、場所と参加者と通知が1文に混ざると途中で解釈をやめます。壊れてはいませんが、形が固定されていて、予定が詰まるほど固定の代償が出ます。
Fantasticalが定期購入で足しているもの
Fantasticalは開発元のFlexibitsが配布していて、無料で使える範囲と、Fantastical Premiumの内側に置かれた範囲に分かれます。価格は改定されるため、記事の数字ではなく開発元の価格ページで確認してください。
有料側でよく挙がるのは次の機能です。
- カレンダーセット。表示するカレンダーの組み合わせを名前を付けて保存し、1回の操作でまとめて切り替える
- より強い文の解釈。場所、参加者、通知、繰り返しを1文に混ぜても、それぞれの欄に振り分ける
- タスクの同居。リマインダーや外部のタスクサービスの項目を、予定と同じ画面に並べる
- 空き時間の提示と提案リンク。空いている枠を相手が選べる形で共有する
- 天気、複数のタイムゾーン、繰り返し使う予定のひな型
並べてみると性質が見えてきます。この一覧のほとんどは、カレンダーに新しい情報を足すものではありません。情報を入れる速さと出す速さを変えるものです。これは十分にお金を払う値打ちのある対象ですが、値打ちの大きさは「1週間に何件の予定がその画面を通るか」に比例します。件数が少ない人にとっては、速くなった分の合計が定期購入の金額に届きません。
4つの軸で並べる
| 比較する点 | 純正カレンダー | Fantastical |
|---|---|---|
| 料金の形 | macOSに付属 | 無料の範囲と定期購入の範囲に分かれる |
| 使えるアカウント | iCloud、Google、Exchange、CalDAV | 同じ種類に対応 |
| 文での入力 | 単純な言い回しに対応 | 場所・参加者・通知を含む長い文に対応 |
| 表示の切り替え | カレンダーごとのチェックボックス | カレンダーセットで一括(有料) |
| 予定の移動時間 | 項目として対応 | 項目として対応 |
| タスクの同居 | 別アプリに分かれる | 同じ画面に並べられる(有料) |
| 空き時間の共有 | なし | 提案リンクに対応(有料) |
| 対応する機器 | Mac、iPhone、iPad、Apple Watch、Webのカレンダー | Mac、iPhone、iPad、Apple Watchほか |
表の中で判断を分けるのは、いちばん上の行です。機能の数ではありません。毎朝開く道具なら定期購入はすぐに元が取れますし、週に2回しか開かない道具なら、どれだけ機能があっても元は取れません。ここを先に決めておくと、残りの行は「あれば嬉しい」の話に落ち着きます。
文で入力する速さは、どこで差が出るか
乗り換えの理由として最も多く挙がるのが文の解釈です。宣伝用の例文ではなく、自分の予定で試すのが唯一の確かめ方になります。
実際の1週間から予定を5件選び、同じ文を両方のアプリに打ち込んでください。「金曜12時 昼食」のような短い文は、どちらでも同じように通ります。差が開くのは、要素が混ざった文です。場所と所要時間と通知と相手の名前が1文に入ると、解釈の強い側は各欄に振り分け、単純な側は残りをタイトル欄に置いたままにします。5件すべてが両方で正しく入るなら、文の解釈は乗り換えの理由になりません。
もう1つ、解釈の強さの手前に本質的な問題があります。文で打つのが速いのは、打つ人の頭の中で文がすでにできている場合だけです。会話の途中で決まった予定は、形になる前に決まります。そこでの詰まりは入力欄の性能ではなく、時間を聞いてからキーボードに向かうまでの距離にあります。だからMac用のカレンダーアプリの中には、話し言葉と音声で予定を入れられることを付け足しではなく主要な入口として設計しているものがあります。音声からの取り込みがどう動くのかは予定の入れ方にまとめてあります。比較の軸に入れておくと、単に解釈が強いだけのアプリとの違いが見えます。
移動時間は「項目」であって「計画」ではない
移動時間はどちらのアプリにもあり、扱い方も同じです。1つの予定に属する情報として持ちます。街の反対側に1件だけ訪問する日には、これで足ります。
足りなくなるのは、1日に3か所を回る日です。予定に付いた移動時間が答えているのは「通知を何時に出すか」であって、「この1日は物理的に成立するか」ではありません。それぞれの予定に正しい移動時間が入っていても、2件目の場所と3件目の場所の間に必要な移動が、空いている時間より長ければ、その日は最初から破綻しています。どちらのアプリもそれを教えてくれません。人間が気づくしかありません。
お金を払う前にここを確かめる価値があります。過去2週間を振り返って、うまくいかなかった日を書き出してください。原因が「予定を入れそびれた、入れ方が雑だった」に寄っているなら、解釈の強い入力で改善します。原因が「カレンダー上は問題なく見えたのに、移動が入った瞬間に崩れた」に寄っているなら、直すべきは入力ではなく予定と予定の間の移動の扱いです。この2つは別の問題で、片方を直しても片方は残ります。後者について何が必要になるかは移動時間に整理してあります。
同期の中身は同じなので、試す費用はほぼゼロ
見落とされがちですが、両方のアプリは同じアカウントを同じ方式で読んでいます。Googleカレンダーの予定はGoogleカレンダーの予定のままで、アプリ側に別の複製ができるわけではありません。
これは決め方に直接効きます。カレンダーアプリを替えても、データの移行は起きません。予定が失われる危険もありません。囲い込みも発生しません。アンインストールすれば元の状態に戻ります。つまり、調べてから試すのではなく、試してから決めるほうが順番として正しくなります。同じMacに両方を入れて1週間並べて使い、同じ予定が両方に出ている状態で比べられます。Macで選べる他のカレンダーがどう違うのかは他のカレンダーとの比較に一覧があります。定期購入の金額そのものが判断の中心になっている場合は、買い切りで持てる選択肢も含めて購入の条件を並べて比べてください。
機能表ではなく「失敗の型」で決める
ここまでの内容を、決め方の手順にします。比較記事を何本読んでも決まらないのは、比べる軸が自分の失敗とつながっていないからです。
まず1週間、ソフトを何も変えずに記録だけ取ってください。カレンダーが遅かった、間違っていた、見なかった、という出来事を1行ずつ書きます。7日分たまったら読み返して、次の3つのどれに寄っているかを見ます。
- 入れる手間で落としている。予定を後回しにして忘れた、口頭で決まった予定が入っていない。この型は入力の速さで改善する。音声からの取り込みが効くのもここ
- 見る手間で落としている。表示するカレンダーの切り替えに時間がかかる、仕事と家庭の予定が混ざって読めない。この型はカレンダーセットのような表示の仕組みで改善する
- 組み立てで落としている。予定は正しく入っているのに、移動や作業時間の置き場所がなくて一日が崩れる。この型は入力を速くしても改善しない
3つ目に寄っている人が定期購入に移ると、たいてい期待した効果が出ません。速く入るようになっただけで、一日の形は変わらないからです。逆に1つ目と2つ目に寄っているなら、有料側の機能はそのまま効きます。この見分けを先にやるかどうかで、同じ金額の意味が変わります。カレンダーアプリでどこまで組み立てを助けられるのかはできることに整理してあり、料金や対応環境についてよく届く質問はよくある質問にまとめてあります。
判断の順番としては、記録を1週間取る、失敗の型を見分ける、その型に効く機能だけを見る、価格は開発元のページで確認する、の4段階で足ります。機能の全項目を比べる必要はありません。自分が落としている場所に効かない機能は、あってもなくても結果は同じです。
よくある質問
純正カレンダーにも文で入力する機能があるなら、Fantasticalに移る意味はありますか?
打ち込む文の複雑さによります。「火曜19時 会食」のような短い文はどちらでも正しく入るため、有料の解釈が効くのは場所と参加者と通知が1文に混ざる場合です。実際の予定を5件選んで両方で試し、結果が同じなら入力は移る理由になりません。
カレンダーアプリを替えると、いまの予定は消えたり二重になったりしませんか?
なりません。どちらもiCloudやGoogleなどのアカウントを同じ方式で読んでいるだけで、予定の本体はサーバー側にあります。2つのアプリを同時に入れても同じ予定が両方に表示されるだけで、アンインストールすれば元の状態に戻ります。
Fantasticalの有料部分には具体的に何が入っていますか?
カレンダーセット、タスクの同居、空き時間の提案リンク、天気、予定のひな型などが定期購入の内側に置かれ、基本的な閲覧と予定の作成は無料の範囲に残ります。区分と価格は改定されるため、判断の前にFlexibitsの価格ページで最新の内容を確認してください。
1日に3か所回る日の移動時間は、どちらのアプリで管理できますか?
どちらも移動時間を1つの予定に付く項目として扱うため、開始前の時間の確保と出発の通知はできます。ただし2件目の場所から3件目の場所への移動が間に合うかは判定しないので、予定表の上では成立して見える日が実際には回らないことがあります。