カレンダーはGoogleとApple、どっちを軸にするか
新しいMacを開いたら標準のカレンダーが空だった。あるいは、ブラウザのタブに置いていたカレンダーを間違えて閉じてしまい、開き直すのに時間がかかった。カレンダーをgoogleとappleのどっちにするかという問いは、たいていこういう場面で立ち上がります。
この問いに一つの答えが出ないのは、質問の中に別々の判断が2つ入っているからです。片方を決めたつもりで両方を決めてしまうと、1週間もしないうちに破綻します。予定の置き場所と、それを映す画面は、切り離して選べます。
「どっち」と言うとき、2つの選択が混ざっている
1つ目は、予定そのものをどこに置くかです。これはアカウントの話で、Googleアカウント、iCloud、会社のMicrosoftアカウントのいずれか、あるいは複数を同時に、という選び方になります。アカウントは予定の持ち主を決め、誰を招待できるかを決め、そのアカウントを解約したときに何が消えるかを決めます。
2つ目は、その予定を何で見るかです。これはアプリの話で、ブラウザのタブ、macOSに最初から入っているカレンダー、別のMac用のカレンダーアプリのどれか、という選び方です。表示するアプリは、予定を1件も動かさずに後から入れ替えられます。
この2つを混ぜたときに起きる典型が、標準アプリの動きが軽いという理由で「Appleにする」と決め、予定をiCloudへ移し、その後に「打ち合わせ相手から届く招待がすべてGoogleだった」と気づく流れです。アプリの選択は正しく、アカウントの選択だけが間違っていました。逆に、共有の都合でGoogleを選んだのに、ブラウザのタブに置いたままにしてしまい、開くたびに探すことになる例もよくあります。
分けて考えると、片方だけを選ばなければいけない理由も消えます。1台のMacに、Googleアカウントとイベント用のiCloudを同時に載せ、色を分けて1つの画面に並べることができます。判断すべきなのは「どちらが勝つか」ではなく、「どの種類の予定をどのアカウントに持たせるか」と「1日中いちばん前に置いておく画面はどれか」の2点です。
端末の組み合わせで、まず半分は決まる
アカウント選びの入口は機能表ではなく、手元にある端末と、やりとりする相手の環境です。ここで3つのどれに当てはまるかを見ると、比較表を読む前に候補が絞れます。
- Macとipadとiphoneだけで完結し、共有相手も全員Apple製品:iCloudで足ります。追加の仕組みを入れても得るものがほとんどありません
- 仕事相手や家族にAndroidやWindowsが混ざる:Googleアカウントを軸にしたほうが、招待の受け渡しで詰まる回数が減ります
- 会社がGoogle Workspaceを使っている:会社の予定は会社のアカウントが持ちます。ここは選べません。選べるのは私用の予定をどちらに置くかだけです
補足として、相手の環境を確かめる方法は簡単です。直近に届いた会議の招待メールを何通か開き、返信の欄が何で描かれているかを見れば分かります。Googleの招待には出欠を返す欄がメール本文に埋め込まれており、Appleの招待は添付されたICSファイルとして届きます。どちらが多いかで、日々の摩擦がどちら側に寄っているかが判断できます。機能表を10分読むより、この確認のほうが早く終わります。
3つ目に当てはまる人が最も多く、そして最も混乱します。会社アカウントと個人アカウントが並存する状態が出発点になるため、「Googleか、Appleか」という二択そのものが成り立たないからです。この場合の実際の問いは、私用の予定を会社アカウントに入れてしまってよいか、という管理上の判断になります。退職時に消えて困る予定を会社側に置かない、という一点だけ決めておけば、あとはどちらでも構いません。
Googleカレンダーには、Mac用のアプリが配られていない
比較の前提としていちばん効いてくる事実がこれです。Google自身がヘルプに明記しています。
パソコンにカレンダーをダウンロードしてインストールすることはできませんが、オフラインで使用することは可能です。 出典: support.google.com
Googleカレンダーのデスクトップアプリに見えるものは、ブラウザのウインドウからタブや検索欄を隠したものか、Googleアカウントに接続して独自の画面を描く別会社のアプリのどちらかです。前者を選ぶこと自体は問題ありませんが、ブラウザの性質をそのまま引き継ぐ点は理解しておく必要があります。ブラウザを終了すれば消え、他のタブと注意を奪い合い、通信が切れたときの挙動もブラウザ側の都合で決まります。
オフラインの扱いはとくにはっきりしています。Googleが公式に案内しているオフライン対応はChromeだけで、Firefox、Safari、Microsoft Edgeでは対応していません。そのChromeでも、オフラインでできるのは閲覧だけです。過去4週間と今日以降の予定を週・日・月のビューで見ることはできますが、予定の作成と編集、ゲストへのメール送信、タスクへのアクセスはできません。加えて、キャッシュに保存された画像とファイルを削除するとオフライン対応が無効になります。ブラウザの掃除をしただけで空になる可能性がある、ということです。
移動中に予定を入れる習慣がある人にとっては、この一点が分かれ目になります。見た目の好みではなく、通信が切れている時間にカレンダーが道具として使えるかどうかの話です。
Apple標準のカレンダーが持っていて、Googleに無いもの
macOSのカレンダーはブラウザなしで動き、予定の写しを手元に持つため、通信が無くても読み書きできます。加えて、Googleカレンダーの画面には対応する機能が無いものが1つあります。予定に移動時間を紐づけて、直前の予定の場所から所要時間を見積もる機能です。
ただし、この機能には公式に書かれた制限が2つあり、機能そのものより制限のほうが重要です。
目的地に到着するまでに3時間以上かかる予定では、出発時刻の通知は送信されません。 出典: support.apple.com
もう1つの制限は目立たないぶん、実害が大きいものです。予定の場所を変更しても、移動時間は自動では更新されません。訪問だった打ち合わせがオンラインに切り替わっても、前の住所に対して確保された移動の枠はそのまま残り、警告も出ません。手で外す必要があります。
3つ目に、標準アプリを軸にする前に知っておきたい制約があります。URLで購読しているカレンダーは、アプリの中から編集できません。祝日のカレンダーも、誰かから読み取り専用で渡されたカレンダーも同じです。共有されたチームのカレンダーを共同編集できると思っていると、ここでつまずきます。
Googleにあって、Apple標準に無いもの
2つあり、どちらも自分以外の人が関わる場面で効いてきます。
1つ目は予約ページです。空いている時間を外部の人に見せて、その人が自分で枠を取ると予定として書き込まれる仕組みで、macOSのカレンダーには対応する機能がありません。ただしGoogle側にも上限があります。個人のGoogleアカウントで作れる予約ページは1つまでです。さらに、これより前からあった「予約枠」の仕組みは新規作成が終了しており、Googleは2024年8月7日以降の扱いを明記しています。それ以前に書かれた解説記事は、すでに存在しない機能の手順を説明していることになります。
2つ目は共有の細かさです。Googleカレンダーは特定のユーザーに対して5段階の権限を割り当てられます。予定の有無だけを見せる段階から、詳細の閲覧、変更、そして他人への共有設定まで任せる段階までが分かれています。iCloudの共有はこれよりも粗く、名前を指定した相手に閲覧のみか閲覧と編集かを選ぶ形と、リンクを知っている人が購読できる公開カレンダーの形があります。公開カレンダーを購読した人は閲覧しかできない、とAppleは明記しています。
判断の目安は単純です。小さな輪の外にいる相手と日程を合わせる、あるいは「読むだけでなく管理も任せたい」相手がいるなら、Googleの仕組みのほうが余裕があります。家族4人で1つの予定表を共有するだけなら、iCloudのほうが構成要素が少なくて済みます。
片方に寄せると決めたときに、実際に起きること
移行そのものは難しくありません。どちらもICS形式で書き出せるため、予定のデータは運べます。運べないものが3つあります。
1つ目は招待の返信状態です。書き出して読み込む方式では、参加者の出欠は移りません。相手から見れば、こちらは元の予定にいるままです。動いている会議の予定は、移行の対象から外すのが現実的です。
2つ目は繰り返しの例外です。毎週の定例のうち1回だけ時刻を変えた、といった例外は、形式の違いで崩れることがあります。移行後に数週間分を目視で確認する時間を見込んでおくと安全です。
3つ目は通知です。移行の途中で両方のアカウントに同じ予定が存在する期間ができ、同じ予定の通知が2回鳴ります。片方を消すまで続くため、切り替えは移行と同じ日に済ませるのが結局いちばん早く終わります。
移行を決めたときに見落としやすいのが、共有していたカレンダーの扱いです。誰かに渡していた共有設定は移行しません。移行先で改めて共有をやり直す必要があり、相手側の画面からは一度カレンダーが消えます。共有相手がいる場合は、移行の前に「この日から新しい招待を送る」と伝えておくと、相手が古いほうの予定表を見続ける期間を作らずに済みます。逆に、誰からも共有されておらず、誰にも共有していないカレンダーであれば、移行は書き出しと読み込みの2手で終わります。
なお、Googleアカウントを軸にしたままmacOSのカレンダーで表示する構成を選んだ場合、Google側の機能が3つ落ちます。予定のメール通知、新しいGoogleカレンダーの作成、会議室の予約です。どれも致命的ではありませんが、1つ目は気づきにくく、Macで作った予定に対して相手が期待しているメールが飛ばない、という形で表面化します。
決まらないときは、機能ではなく入力の速さで測る
どちらを選んでも解けない部分があります。どちらも予定を保管して表示する仕組みであって、1日に何を入れるかを決めてはくれません。入りきらない1週間は、アプリを替えても入りきりません。
この観点で差が出るのは機能の数ではなく、「予定が必要だと気づいてから、それが枠として存在するまでの秒数」です。入力に6つの欄を埋める必要があると、人は予定を入れなくなり、カレンダーは現実と静かにずれていきます。逆に、口に出すときと同じ形で書けるなら、カレンダーは現実に追いつきます。話し言葉と音声で予定を入れられる入力方式が支持されるのは、この秒数を削るからです。入力の作法は予定の入れ方に、前後の移動と余白を予定の一部として持たせる考え方は移動時間にまとまっています。
アカウントを決めたあとで画面のほうが弱いと分かった場合は、標準アプリと他の選択肢の違いを他のカレンダーとの比較で並べて確認できます。順番を守るのが要点で、アカウントを決める前に比較表を読み始めると、判断の材料が二重になって決まらなくなります。
よくある質問
GoogleカレンダーをMacのアプリとしてインストールできますか?
できません。パソコンにダウンロードしてインストールすることはできない、とGoogleがヘルプに明記しています。デスクトップアプリのように見えるものは、ブラウザのウインドウからタブを隠したものか、Googleアカウントに接続して独自の画面を描く別会社のアプリのどちらかです。後者は本物のアプリですが、Googleが作ったものではありません。
Googleを選んだ場合、Mac標準のカレンダーは使わないほうがよいですか?
逆です。Googleアカウントを標準のカレンダーに追加する構成は一般的で、Googleを予定の置き場所としたまま、オフラインでの読み書きと動作の軽さを得られます。落ちるのは予定のメール通知、新しいGoogleカレンダーの作成、会議室の予約の3つだけで、それ以外は双方向で同期します。
iPhoneも使っている場合、どちらが有利ですか?
どちらでも同じように使えます。iPhoneの標準カレンダーにGoogleアカウントを追加できますし、iPhone用のGoogleカレンダーのアプリも配布されています。端末がAppleで揃っていることは、iCloudを選ぶ理由にはなりますが、Googleを避ける理由にはなりません。判断を分けるのは端末より、やりとりする相手の環境です。
あとから乗り換えることはできますか?
できます。どちらもICS形式で予定を書き出せるため、データは移せます。移らないのは招待への出欠の返信状態と、繰り返し予定の例外設定です。進行中の会議は移行の対象から外し、移行と切り替えを同じ日に終わらせると、同じ予定の通知が二重に鳴る期間を短くできます。