calendar for multiple users|複数人で使うカレンダーの権限設計
calendar for multiple usersで検索する場面は、たいてい同じところで詰まっています。カレンダーを共有したところまでは進んだのに、相手が予定を動かせない、同じ予定が2つ並ぶ、通知が届く人と届かない人がいる。原因は機能の不足ではなく、誰が何をできるかを決めないまま人を足したことにあります。
この記事では、複数人で1つの予定表を回すときに実際に効いてくる権限の段階、所有者という考え方、共有とは別物の委任、そして運用が始まってから出てくる不具合の切り分けを順に整理します。読み終えたときに、次に誰の権限をどこまで上げるかが決められる状態を目指します。
見せることと、動かせることは別の設定
複数人で使うカレンダーの話は、たいてい「共有する・しない」の二択で語られます。実際の設定はそこで止まりません。相手に渡せるものは、予定があるという事実、予定の中身、予定を書き換える権利、他人を招き入れる権利、と段階に分かれています。
この段階を意識せずに共有すると、二方向に事故が起きます。渡しすぎると、社外の相手にも見せたくない打ち合わせの件名が読める状態になります。渡さなすぎると、当番表を書き換えてほしい相手が閲覧しかできず、変更のたびに依頼が飛んできて手間が増えます。共有そのものは1分で終わりますが、そのあと数か月使い続けるのは権限の設計のほうです。
前提として、複数人で使うこと自体に費用はかかりません。GoogleカレンダーもiCloudのカレンダーも、共有と権限の設定は無料の範囲に入っています。有料の道具が必要になるのは、共有ができないからではなく、共有したあとの読みづらさと入力の手間が人数分に増えるからです。6人分の予定を毎朝目で追う時間が5分あるなら、月に100分を表示の設計に払っている計算になります。どこに金額を払うかを決める前に、無料の側でどこまで整うのかを見ておく価値があります。
判断の順番は決まっています。まず、そのカレンダーに入る予定は誰の持ち物なのかを決める。次に、書き換えてよい人を名指しで決める。最後に、それ以外の人には見える範囲だけを渡す。この順で決めると、あとから人が増えても設定が破綻しません。逆に、共有を先に配ってから権限をあとで絞ろうとすると、すでに見えていたものを取り上げる形になり、説明の手間が増えます。
Googleカレンダーの権限は5段階に分かれている
Googleカレンダーで特定の相手やグループにカレンダーを共有するとき、選べるアクセス権は5段階あります。名前が長いので画面では読み飛ばされがちですが、複数人運用でもめる論点はほぼこの表に収まります。
| アクセス権 | 相手ができること |
|---|---|
| 予定の表示(時間枠のみ、詳細は非表示) | 予定が入っている時間帯だけが分かる。件名や中身は見えない |
| 予定の詳細の表示 | 名称、日時、場所、説明まで見える |
| 変更可能(限定公開の予定を、予定の有無としてのみ表示) | 非公開ではない予定を編集できる |
| 予定の詳細を変更、表示可能 | 予定を編集でき、他に誰と共有しているかも分かる |
| 予定の変更および共有の管理 | 予定を完全に管理でき、他のユーザーへの共有も行える |
いちばん下の「予定の変更および共有の管理」は、単に権限が強いというだけの段階ではありません。他人を追加したり外したりできるということは、来月そのカレンダーを誰が読めるかを決める権利を渡すのと同じ意味になります。当番表の書き換えを頼みたいだけなら、その1つ手前で足ります。
所有者以外がカレンダーを共有できないことも、公式の説明に明記されています。
所有権が他のユーザーにあるカレンダーを共有するには、そのユーザーから「予定の変更および共有の管理」権限を付与してもらう必要があります。 出典: support.google.com
もう1点、仕事用や学校用のアカウントを使っている場合は、共有していなくても管理者がカレンダーとすべての予定の詳細を確認できる場合がある、とヘルプに注意書きがあります。本当に人に見せたくない用件は、仕事用カレンダーの中で非公開にするのではなく、別のカレンダーに置くのが筋の通った扱いになります。
所有者は1人のまま変わらない
5人に共有したカレンダーは、5人で持っているカレンダーにはなりません。所有者が1人いて、そこに5人分の入口が開いている状態です。全員が在籍している間はこの区別が見えないため、退職や卒業のタイミングで初めて表面化します。
実務では2つの対応に落ちます。1つは、チームで使うカレンダーを、個人のアカウントではなく共有のアカウントやグループで作ること。もう1つは、共有を追加できるのが所有者だけである以上、その所有アカウントに誰も入れなくなる状況を作らないことです。
予定1件についても同じ構造があります。参加依頼で作られた予定には主催者がいて、主催者側の予定が正本です。招かれた側は自分の出欠や表示先を変えられますが、全員分の日時を動かすことはできません。複数人で日時を動かす可能性があるものは、招待として飛ばすのではなく、その人たちが編集できるカレンダーに置いておくほうが後の手間が減ります。
委任は共有と似て非なる仕組み
Macの標準カレンダーには、共有とは別に委任という仕組みがあります。同じCalDAVまたはExchangeのサービスを使う相手に、カレンダーアカウントそのものへのアクセス権を渡す機能で、「カレンダー」>「設定」>「アカウント」>「委任」から設定します。CalDAVのアカウントでは「書き込みを許可」にチェックを入れるかどうかで編集の可否が決まり、Exchangeのアカウントではアクセスレベルを選びます。
委任されたカレンダーは、メインのウインドウに他のカレンダーと並べて出すこともできますし、「ウインドウ」メニューからアカウント名を選んで別ウインドウに出すこともできます。誰かの予定を代わりに組む立場の人にとっては、自分の予定と混ぜずに開けるほうが事故が減ります。
委任には共有側に無い制御もあります。カレンダーアカウントを共有している場合、予定の「プライベート」チェックボックスを入れると、他の人からは中身が見えなくなります。予定に出席者がいる場合やCalDAV・Exchangeで管理されていない場合はこの項目が出てこないと注記されており、その状況では情報がすでにアカウントの外へ出ているという意味でもあります。
整理すると、共有はカレンダーを相手に見せる仕組み、委任は相手が自分のアカウントとして操作する仕組みです。秘書役や代理で予定を組む人がいる体制なら委任、チーム全員で1つの表を回すなら共有が合います。個々のカレンダーを何枚も編集権付きで配っている状態は、選択を間違えているときによく出ます。
二重に見える・変更できないときに見る場所
運用が始まって最初の1か月で出てくる不具合は、ほぼ次の4つに収まります。
- 同じ予定が2つ並ぶ。多くは、予定が乗っているカレンダーを共有で見ていて、同時にその予定へ招待もされている状態です。サーバ側で重複しているのではなく、同じ1件を2つの経路で描いています。どちらかのカレンダーの表示を外せば消えます
- 予定を変更できない。照会(購読)しているカレンダーの予定は編集できません。閲覧のみの権限で共有されている場合も同様で、カレンダーリストで名前にポインタを置くと権限を確認できます。招待された予定で変更できるのは、自分の出欠、表示するカレンダー、通知、自分の空き状況に限られます
- 自分が作った予定なのに変更できない。「連絡先」の自分のカードに載っていないメールアドレスを使っているときに起きます。使っているアドレスをすべてカードに入れておくと解決します
- 時刻が人によってずれる。Macの標準カレンダーは時間帯のサポートが初期状態では入っていません。「カレンダー」>「設定」>「詳細」で有効にしていないと、移動中に作った予定が他の人の画面で違う時刻に置かれることがあります
通知も人ごとに分かれています。Macの標準カレンダーでは、デフォルトの通知はアカウントごとに設定する仕組みで、しかも初期状態では新規の予定に通知が付きません。共有の当番表を作っただけでは誰にも鳴らないという前提で、鳴らす必要がある予定には明示的に通知を入れておく必要があります。
人数と関係によって、置き方が変わる
同じ「複数人で使う」でも、関係によって最適な置き方は変わります。ここを一緒くたにすると、家庭に会社の作法を持ち込んで続かなくなったり、逆に業務の予定表が個人の私物のまま運用されたりします。
2人から4人程度の家庭や小さなチームでは、全員が編集できる1枚のカレンダーで足ります。誰が入れたかを気にする段階になく、書き込む手間を下げるほうが効きます。この規模で権限を細かく刻むと、入力が面倒になって使われなくなります。
5人を超えたあたりから、1枚では読めなくなります。全員分の予定が同じ色で重なると、自分に関係のある予定を探す時間のほうが長くなるためです。この段階で必要になるのは権限の強化ではなく、カレンダーを役割で分けることです。当番、来客、設備の予約のように、見る人が違うものを別のカレンダーに割ると、表示を切り替えるだけで読める状態に戻ります。
社外の相手が混ざる場合は、共有ではなく参加依頼で扱うのが原則になります。カレンダーそのものを渡すと、そこに今後入る予定まで全部見えることになるためです。1件ずつの参加依頼なら、渡す情報はその予定に限定できます。
会議室や社用車のような設備は、人ではなくものに紐づくカレンダーを1枚作り、そこに全員が書き込む形が扱いやすくなります。個人のアカウントの中に設備の予定を混ぜると、その人が不在のときに誰も予約状況を確認できなくなります。
2人目を追加する前に決めておくこと
- 所有アカウントを決める。来年も残っているアカウントにする
- 人ごとに権限の段階を分ける。全員を最上位にしない
- カレンダーは「隠せる単位」で切る。表示・非表示・色・共有はカレンダー単位でしか動かせないため、一部の人が見なくてよいものは別のカレンダーに出す
- 社外への参加依頼を出すアカウントを1つに決める。返信の宛先が散ると、出欠を持っている人がいなくなる
- 「予定あり」の意味をそろえる。作業時間まで埋める人と会議だけ入れる人が混ざると、空き時間が信用されなくなる
カレンダーアプリ側で吸収できるのはどこまでか
権限とアカウントの設計は、どのカレンダーアプリを使っても変わりません。アプリを替えて改善するのは、決まったあとの手数のほうです。複数人の予定を並べて読むときの見やすさ、予定を作るときの入力の速さ、移動時間を含めた枠の取り方が主な差になります。
Mac用のカレンダーアプリを比べる観点は他のカレンダーとの比較に整理してあります。予定を作る側の手数を減らす話は予定の入れ方、会議と会議の間に移動を挟む考え方は移動時間にまとめています。複数人の予定を扱う場面では、話し言葉と音声で予定を入れられるかどうかが、代理で予定を組む人の負担に直接効いてきます。
共有の設定は一度決めれば終わりますが、人が増えるたびに権限を選ぶ判断は残ります。最初に所有者と段階を決めておけば、その判断は毎回10秒で済むようになります。
よくある質問
複数人で同時に同じ予定を編集したらどうなりますか?
編集の権限を持つ人が複数いれば同時に触れますが、ロックや共同編集の表示はありません。数秒差で同じ予定を編集すると、あとから保存されたほうが残ります。予約枠のように衝突が問題になる用途では、1本のカレンダーに全員が書き込むより、人ごとにカレンダーを分けて同じ画面で重ねるほうが安全です。
共有カレンダーの所有者が退職したらどうなりますか?
カレンダーはそのアカウントに属しているため、アカウントの扱いに従います。組織で管理しているアカウントなら管理者がデータを移せますが、個人のアカウントでは移管の経路がなく、閉じられた時点で共有相手からも見えなくなります。チームで使うものは最初から共有アカウントやグループで作っておくのが確実です。
予定の中身は見せずに、空いている時間だけ伝えられますか?
できます。いちばん下のアクセス権を選ぶと、予定が入っている時間帯だけが相手に見え、件名や説明は見えません。社外の相手や、直接の担当ではない人に渡す既定としてはこの段階が妥当です。必要になった人だけ後から詳細の表示に上げれば済みます。
同じ共有カレンダーなのに、編集できる人とできない人がいるのはなぜですか?
その予定に届いている経路が違う可能性が高いです。カレンダー自体に編集権を持つ人は本文も日時も変えられますが、参加依頼で受け取っただけの人は、自分の出欠、表示先のカレンダー、通知、空き状況しか変えられません。カレンダーリストで名前の横に出る権限表示を見ると、どちらの立場かがすぐ分かります。