予定のインポートとエクスポートとは|何ができて、どこで詰まるか

カレンダーの設定画面に並んでいる「インポート」と「エクスポート」。名前は知っていても、押すと何が起きるのか、同期や共有と何が違うのかを説明できる人は多くありません。

予定のインポートとエクスポートとは、予定をファイルにして持ち出し、別のカレンダーに読み込ませる仕組みです。この記事では、そのファイルの中身、形式ごとの違い、運べる情報と運べない情報を順に整理し、どんな場面で使えばよいか、どこで詰まりやすいかを判断できるようにします。

インポートとエクスポートが使われる場面

予定をファイルで運ぶ場面は、日常の予定管理ではあまり発生しません。発生するのは、何かが切り替わるときです。

1つ目は、使うアプリやアカウントを乗り換えるときです。会社のカレンダーから個人のカレンダーへ、あるアプリから別のアプリへ、過去の予定をまとめて移します。2つ目は、使わなくなるアカウントの予定を控えとして残すときです。退職や契約の終了で消えるアカウントの中身を、手元に保存しておきます。Googleアカウントの場合は、カレンダーの画面からの書き出しのほかに、アカウント全体のデータを書き出すサービスも使えます。こちらはGoogleのヘルプによると、作られたアーカイブが約7日で期限切れになり、ダウンロードは5回までなので、受け取ったら早めに保存しておく必要があります。3つ目は、学校や団体、イベントの主催者が配る予定表を、自分のカレンダーに取り込むときです。

2026年は、1つ目の場面が起きやすい年です。Microsoftは、従来版のOutlook for Macのサポートを2026年10月に終えると公表しています。Exchange Onlineで使われてきたEWSという接続の仕組みも、2026年10月1日に廃止されると案内されています。新しい版へ移る人や、この機会に別のカレンダーへ移る人が、インポートとエクスポートを検討することになります。

どの場面にも共通するのは、1回、または節目ごとに行う作業だという点です。毎日の予定をそろえ続ける仕組みではありません。この性質を押さえておくと、後の判断がぶれにくくなります。

予定を運ぶファイルの中身:iCalendar

カレンダーの間で予定を運ぶファイルは、多くの場合.icsという拡張子の付いたファイルです。これはiCalendarという共通の書式で書かれた文字のファイルで、書式はインターネットの標準文書であるRFC 5545で定められています。RFC 5545は2009年9月に公開されました。

The file extension of "ics" is to be used to designate a file containing (an arbitrary set of) calendaring and scheduling information consistent with this MIME content type. 出典: rfc-editor.org

共通の書式があるので、Googleカレンダーで書き出した予定をMacのカレンダーやOutlookに読み込めます。ファイルの中では、1件の予定が1つのまとまりとして書かれ、その中に件名、開始と終了の日時、場所、説明、繰り返しの規則などが項目ごとに並びます。

中でも大事なのが、予定1件ごとに付くUIDという識別子です。RFC 5545は、UIDが世界で重ならない識別子でなければならないと定めています。カレンダーアプリは、この識別子を手がかりに同じ予定かどうかを見分けます。書き出したファイルを別のアプリで開いて保存し直すと、この識別子や日時の書き方が変わる可能性があり、読み込みでの失敗の原因になり得ます。

また、RFC 5545は1行を75オクテットより長くしないよう定めていて、長い行は折り返して書かれます。テキストエディタで開いて手で直すと、この折り返しを壊してしまうことがあります。中身を確かめるのはよいのですが、編集は元のアプリで行うのが安全です。

形式ごとの違いを表で整理する

予定を運ぶファイルは.icsだけではありません。アプリによって書き出す形式が違い、読み込めるかどうかも変わります。

形式 主に作るアプリ 中身 他社のアプリで読めるか
.ics Googleカレンダー、Macのカレンダー、Outlookなど iCalendarの書式の予定 主要なカレンダーで読める
.zip Googleカレンダーで全カレンダーを書き出したとき 複数の.icsをまとめたもの 展開して.icsを1つずつ読み込む
.csv 表計算ソフト、一部のアプリ 1行が1件の予定 Googleカレンダーは見出しが英語の形式なら読める
.icbu Macのカレンダーのアーカイブ 全カレンダーの控え Outlook for Macは読めないとMicrosoftが説明
.olm Outlook for Mac メール、連絡先、予定などの控え Outlook for Macで読み込む
.pst Windows版のOutlook メール、連絡先、予定などの控え Outlook for Macで読み込める場合がある

実務で押さえるのは、他社のアプリへ渡すなら.icsを選ぶことです。.icbuはMacのカレンダーで復元するための形式で、Appleは、アーカイブを読み込むと現在のカレンダーの情報とデータがすべて置き換えられると注意しています。.csvは表計算で中身を見やすい反面、Googleカレンダーのヘルプによると、繰り返しの予定が1回ずつの予定の連続として入ることがあります。

運べる情報と、運べない情報

インポートとエクスポートで運べるのは、予定そのものの情報です。件名、日時、場所、説明、終日かどうか、繰り返しの規則は、.icsであれば多くの場合そのまま移ります。

一方で、アプリごとに運べない情報があります。Googleカレンダーでは、予定を読み込んでもゲストと会議のデータは読み込まれません。参加者の一覧やビデオ会議の情報は、読み込み先で付け直す必要があります。Macのカレンダーでは、.icsを読み込むと予定に付けていた独自の色が外れ、アーカイブを読み込むとすべてのカレンダーの独自の色が外れます。

時刻の扱いにも注意がいります。Googleカレンダーのヘルプは、書き出し元のアプリとGoogleカレンダーのタイムゾーンが一致していないと、予定が正しい時刻に表示されないと説明しています。日本時間と協定世界時の差は9時間なので、ちょうどその分ずれていれば設定の違いを疑えます。

もう1つ、運ばれないものがあります。それは「その後の変更」です。読み込んだ予定は、読み込んだ時点の写しです。元のカレンダーで予定を動かしても、読み込み先の予定は動きません。

3つのカレンダーでの基本の操作

仕組みを押さえたところで、主要なカレンダーでの操作の入り口を確認しておきます。細かな画面の表記は更新で変わることがあるので、入り口と流れだけを把握しておけば十分です。

Googleカレンダーでは、パソコンのブラウザで右上の設定を開き、左側のメニューからインポートとエクスポートを選びます。書き出しを選ぶと、すべてのカレンダーが.zipでまとめて保存されます。1つのカレンダーだけを書き出したいときは、そのカレンダーの設定から.icsとして保存できます。読み込みは同じ画面で、パソコンの中のファイルを選び、入れる先のカレンダーを指定してから実行します。何も指定しなければ、予定はメインのカレンダーに入ります。

Macのカレンダーでは、書き出したいカレンダーを一覧で選び、「ファイル」>「書き出す」>「書き出す」で.icsファイルを保存します。読み込みは、ファイルをカレンダーの画面にドラッグするか、「ファイル」>「読み込む」でファイルを選び、入れる先のカレンダーを選んで確定します。Appleのヘルプは、必要に応じて先に新しいカレンダーを作っておく手順も案内しています。

Outlook.comでは、Web版のカレンダー画面から、ファイルからアップロードする項目を選び、.icsファイルを指定して、入れる先のカレンダーを選んで読み込みます。Outlook for Macでは、Finderで.icsファイルを探し、Outlookのカレンダーの画面にドラッグして読み込めます。Microsoftは、Outlook for Macに複数のアカウントを設定している場合は、読み込むときに正しいカレンダーを選ぶ必要があると注意しています。

購読・共有・並べて表示との違い

予定を別の場所で見る方法は、インポート以外にもあります。目的に合わない方法を選ぶと、二重登録や反映の遅れに悩むことになるので、違いを並べておきます。

方法 何が起きるか 元の変更の反映 向いている用途
インポート 予定の写しを作る 反映されない 引っ越し、控えの保存
購読 公開されたアドレスから定期的に取り込む 時間差で反映される 行事予定、祝日、配布される予定表
共有 相手のカレンダーを自分の画面で見る、または編集する すぐ反映される 同じサービスを使う家族やチーム
1つのアプリに並べる 複数のアカウントを1つの画面に表示する それぞれのアカウントの変更がそのまま出る 仕事と個人など、別々のアカウントをまとめて見る

購読の反映には時間差があります。MicrosoftはOutlook.comの購読について、更新はおおむね3時間ごとで、24時間以上かかる場合もあると説明しています。Googleカレンダーでは、URLでカレンダーを追加する操作はパソコンのブラウザから行う必要があり、スマートフォンのアプリではできません。

どこで詰まるかの見取り図

インポートとエクスポートの詰まりは、起きる場所で3つに分かれます。細かな対処の前に、どこで止まっているかを見分けると、見る場所が絞れます。

1つ目は書き出す側です。Googleカレンダーの書き出しはパソコンからしかできず、そのカレンダーの変更および共有の管理権限が必要です。会社や学校のアカウントでは、管理者が書き出しを制限していることがあります。

2つ目はファイルと読み込む側の条件です。Googleカレンダーが読み込めるのは1MB以下のファイルで、CSVの区切りはカンマである必要があります。従来版のOutlook for Macでは、Outlook on the web、iCloud、Googleのカレンダーは現時点で読み込めないとMicrosoftが説明しています。

3つ目は読み込んだ後です。時刻のずれ、繰り返しの崩れ、参加者の欠落、同じファイルを重ねて読み込んだことによる二重登録がここに当たります。読み込む前に読み込み専用のカレンダーを作っておけば、失敗してもそのカレンダーごと削除して元に戻せます。

独自データの考察:写すか、並べるか

インポートとエクスポートは、予定を「写す」ための仕組みです。写しは移し替えの瞬間には便利ですが、元の予定が変わるたびに差が開きます。そのため、引っ越しや控えの保存には向き、毎日の予定をそろえる用途には向きません。

複数のカレンダーを使い分けている場合、目的が「予定を1か所に集めること」なのか「全部を一度に見渡すこと」なのかを分けて考えると、選ぶ方法が変わります。見渡すことが目的なら、写す必要はありません。アカウントごとMac用のカレンダーアプリに追加して並べれば、二重登録も反映の遅れも起きません。どのような表示ができるかはできることに、アプリごとの違いは他のカレンダーとの比較に整理しています。

引っ越しが終わった後に効いてくるのは、新しい予定を入れる手間の少なさです。予定の入れ方の手順は予定の入れ方に、会議の合間の移動を予定として扱う考え方は移動時間にまとめています。

よくある質問

インポートとエクスポートは同期と同じものですか?

同じではありません。インポートは読み込んだ時点の予定の写しを作る操作で、元のカレンダーで予定を変えても読み込み先には反映されません。変更を反映させ続けたい場合は、共有や購読、または複数のアカウントを1つのアプリに並べて表示する方法を選びます。

.icsファイルとは何ですか?

iCalendarという共通の書式で予定を書いた文字のファイルです。書式はRFC 5545で定められていて、Googleカレンダー、Macのカレンダー、Outlookなど主要なカレンダーで読み書きできます。1件ごとの予定に、件名や日時、繰り返しの規則、重ならない識別子が書かれています。

Macのカレンダーの「アーカイブ」と「書き出す」は何が違いますか?

「書き出す」は選んだカレンダーを.icsファイルにし、他のアプリにも渡せます。「カレンダーのアーカイブ」は全カレンダーを.icbuファイルにまとめる控えで、読み込むと現在のカレンダーの情報とデータがすべて置き換えられます。予定を足したいときや他社のアプリへ移すときは.icsを使います。

インポートすると参加者やビデオ会議の情報も移りますか?

Googleカレンダーでは移りません。公式ヘルプに、予定を読み込んでもゲストと会議のデータは読み込まれないと書かれています。件名や日時などの予定そのものは移るので、参加者への連絡が必要な予定は、読み込んだ後に招待を付け直す必要があります。

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