複数カレンダーの統合とは|何ができて、どこで詰まるか

複数カレンダーの統合という言葉は、人によって指しているものが違います。ある人は「GoogleとiCloudの予定を1つの画面で見ること」を、別の人は「個人の予定が入ったら会社のカレンダーも埋まること」を、また別の人は「全部の予定を1つのアカウントに移すこと」を思い浮かべます。同じ言葉で探しているのに、必要な仕組みも、つまずく場所もまるで違います。

この記事では、統合を3つの深さに分けて、それぞれ何が動いていて何ができるのかを説明します。そのうえで、統合しても1つにならないもの、統合が詰まりやすい3つの場所を整理し、始める前に決めておくことを示します。

複数カレンダーの統合は3つの深さに分かれる

統合は、予定のデータがどこまで移動するかで3段階に分けられます。

深さ 動くもの 予定の置き場所 他の人から見えるもの
表示の統合 何も動かない。アプリが各アカウントを読んで重ねる 各アカウントのまま 変わらない
空き時間の統合 「埋まっている」という情報だけが別のカレンダーへ 元のアカウントと、写し先に枠 写し先で埋まって見える
実体の統合 題名や場所を含む予定そのものが別のカレンダーへ 写し先にも同じ予定 写し先の権限で中身まで見える

表示の統合は、いちばん浅い形です。予定は仕事のアカウント、個人のアカウントにそれぞれ置かれたまま、手元のアプリが両方を読みに行って1つの週表示に並べます。本人の画面は1つになりますが、同僚が会社のカレンダーを見ても、個人の予定は見えません。

空き時間の統合は、他の人から見た状態を変えるための形です。個人のカレンダーに通院の予定が入ると、会社のカレンダーに「予定あり」の枠だけが置かれます。同僚には時間が埋まっていることだけが伝わり、通院という中身は伝わりません。

実体の統合は、予定を丸ごと複製する形です。1か所にすべてを集められる一方、個人の予定の題名や場所が会社のアカウントにも残ります。どの深さを選ぶかで、便利さと、情報がどこまで広がるかが同時に決まります。

裏で行き来しているのは2種類のデータ

カレンダーの間を行き来するデータは、大きく「予定のデータ」と「空き時間のデータ」の2種類です。カレンダーの共通形式を定めた RFC 5545 は、予定、やること、日誌、空き時間の情報を、特定のサービスに依存せずに表す形式として定義されています。予定をやり取りする手順を定めた RFC 4791(CalDAV)は、この形式のデータにアクセスし、管理し、共有する標準の方法を定めています。GoogleやMicrosoftは、これとは別に自社の接続の仕組みも用意しています。

表示の統合と実体の統合で動くのは、予定のデータです。題名、日時、場所、参加者、繰り返しの規則などが含まれます。空き時間の統合で使われるのは、どの時間帯が埋まっているかだけを持つデータです。

この違いは、共有の権限にもそのまま現れます。Googleカレンダーの共有でいちばん浅い権限は、次のように説明されています。

共有相手は、カレンダーで予定がある時間枠のみを確認できます。カレンダーの予定やタスクの名称や詳細を確認することはできません。 出典: support.google.com

この権限で共有されたカレンダーを統合した画面に並べると、題名のない塊が並ぶだけになります。アプリの不具合ではなく、そもそも予定のデータが渡されていないためです。

データの届け方にも2通りあります。アカウントでログインしてつなぐ場合や共有でつなぐ場合は、変更がアカウントの仕組みに乗って届きます。公開されたURL(.ics)を購読する場合は、取得する側が決めた間隔でファイルを読みに行くだけです。Microsoftのサポートページは、購読の更新を Outlook.com で約3時間ごと、Outlook on the web で約6時間ごととし、どちらも24時間を超えることがあると書いています。同じ表示の統合でも、どの経路で届くカレンダーかによって、変更が画面に出るまでの時間が大きく変わります。

統合した画面でできること

表示の統合だけでも、日々の予定の扱い方は大きく変わります。

  • 仕事と個人の予定を同じ週表示に並べ、重なりや空きを1回で確かめられる
  • カレンダーごとに色を分け、どのアカウントの予定かを見た目で区別できる
  • 特定のカレンダーを一時的に隠し、仕事の時間だけ、家族の予定だけを見られる
  • アカウントを切り替えずに、どのカレンダーにも予定を入れられる(書き込みの権限がある場合)

空き時間の統合まで進めると、自分の画面の外にも効果が出ます。同僚や社外の相手が日程調整の画面で空き時間を探したとき、個人の予定がある時間は埋まって見えます。Microsoftのサポートページによると、Outlook on the web では、仕事や学校のアカウントに Outlook.com かGoogleのアカウントを1つつなぎ、その個人の予定を、日程調整する相手に見せる空き時間に含められます。

統合しても1つにならないもの

画面が1つになっても、アカウントごとに持っている機能までは1つにまとまりません。統合したつもりで困るのは、たいていここです。

1つ目は招待です。会議の招待は、招待されたアカウントに届き、出欠もそのアカウントとして返します。統合した画面から返事をしても、相手に見える差出人は招待を受けたアカウントです。仕事の会議に個人のアカウントで出席の返事をする、という取り違えは、表示の統合では防げません。

2つ目は、アカウント側の機能です。GoogleのヘルプはAppleのカレンダーで使えないGoogleカレンダーの機能として、予定のメール通知、新しい Google カレンダーの作成、会議室の予約機能の3つを挙げています。統合した画面では、これらは元のGoogleカレンダーで操作することになります。

3つ目は、統合する側の決まりとの食い違いです。MicrosoftはOutlookにGoogleのアカウントを追加した場合の既知の問題として、予定の添付ファイルに対応していないこと、Outlookで作った予定の公開範囲がGoogle側の設定にかかわらず既定で「Public」になることを挙げています。統合した画面で作った予定と、元のカレンダーで作った予定とで、扱いが揃わないことがあります。

実体の統合を選ぶときに知っておくこと

予定を丸ごと1か所に集める実体の統合は、見た目がいちばん分かりやすい反面、仕組みの選び方で結果が大きく変わります。

手作業でできる方法として、書き出したファイルを別のアカウントに読み込む手順がありますが、これは統合というより複製です。Googleのヘルプは、読み込んだ予定は2つのアカウント間で同期されるわけではないと明記しています。読み込んだあとに元のカレンダーで時刻を変えても、写しは古い時刻のまま残ります。さらに、.csv ファイルから定期的な予定を読み込むと、1回限りの予定の連続として表示されることがあるとも書かれています。毎週の定例を1件ずつ直す手間が、ここで生まれます。

継続して複製するには、アカウントの外で動き続ける同期の仕組みが必要です。その場合でも、写し先で予定を消したときに元の予定まで消えるのか、元で消したときに写しも消えるのか、という向きの決まりは、使う仕組みとその設定によって決まるため、使い始める前に確かめておきます。実体の統合を選ぶときは、どちらを「元」とするかを先に決め、直すのは常に元の側だけにしておくと、2つの予定が食い違ったまま残る事態を防げます。

情報の広がりも考えておきます。個人の予定を会社のアカウントに丸ごと複製すると、会社のカレンダーを見られる人や、組織の管理者の目に触れる範囲に、題名や場所が置かれることになります。Googleのヘルプは、カレンダーを共有していない場合でも、管理者はカレンダーとすべての予定の詳細を確認できる可能性があるとしています。

詰まる場所1:共有の権限

統合がうまくいかない原因として最も多いのが、共有の権限です。Googleカレンダーで他の人と共有するときは、次の5段階から選びます。

権限 統合した画面での見え方
予定の表示(時間枠のみ、詳細は非表示) 題名のない塊として出る
予定の詳細の表示 中身まで見えるが、変更はできない
変更可能(限定公開の予定を、予定の有無としてのみ表示) 限定公開でない予定を変更できる
予定の詳細を変更、表示可能 予定を変更でき、共有している他の人も分かる
予定の変更および共有の管理 共有の設定まで変えられる

自分の複数のアカウントを統合するときは、同じ人が両方を持っているので、つい権限を意識せずに共有してしまいます。どの深さの統合をしたいかによって、渡す権限は変わります。表示の統合で中身まで見たいなら「予定の詳細の表示」以上、別のアカウントから予定を直したいなら「変更可能」以上が必要です。

Microsoftの既知の問題には、Free & Busy の権限で共有されたカレンダーはOutlookで機能しないこと、共有されたカレンダーは20個までという制限も書かれています。

詰まる場所2:組織の方針

仕事や学校のアカウントは、本人の設定より組織の方針が優先されます。Googleのヘルプは、職場または学校のアカウントで利用するカレンダーについて、共有できるかどうかは管理者が決定するとしています。組織内のユーザーに表示を許可した場合でも、組織外のユーザーはカレンダーを表示できないという説明もあります。

つまり、会社のカレンダーを個人のアカウントに共有する形の統合は、組織が外部への共有を止めていれば、そもそも成り立ちません。外部のアプリやサービスをつなぐ場合も、管理者がアプリの接続を許可しているかどうかで結果が変わります。統合の方法を探す前に、組織が何を許しているかを確かめる順番にすると、試しては止められる回数が減ります。

個人のアカウントの側にも、仕組み上の条件があります。iCloudのカレンダーを外部のアプリやサービスにつなぐときはアプリ用パスワードが必要で、Apple Accountを2ファクタ認証で保護しておくことが前提になります。アプリ用パスワードは最大25個まで持てますが、Apple Accountのパスワードを変更またはリセットすると、すべて自動的に消去されます。統合が突然止まったときは、この操作をしていないかを最初に思い出すと原因に早くたどり着けます。

詰まる場所3:新しい予定をどこに入れるか

統合した画面は、どのカレンダーにも予定を入れられる便利さと引き換えに、「この予定はどこに置くべきか」を毎回決める必要を生みます。見落とされやすいのがこの点です。

アプリには既定のカレンダーがあり、何も選ばずに予定を作るとそこに入ります。既定が個人のアカウントになっていると、社外の人を招待した会議が個人のアドレスから送られることになります。逆に既定が会社のアカウントなら、家族の予定が会社のカレンダーに残ります。

統合する前に、置き場所の決まりを1行で書いておくと迷いが減ります。「人を招待する予定は会社」「自分だけの予定は個人」「家族と共有する予定は家族のカレンダー」のように、予定の性質で決めると、統合した画面のどこから入れても置き場所がぶれません。

統合したあとに見えてくるもの

3つの深さのどれを選んでも、統合が終わると、それまで別々のカレンダーに分かれていて見えなかった並びが現れます。午前の会議のすぐあとに別のアカウントの外出予定が入っている、個人の用事の直前に会社の打ち合わせが延びる余地がない、といった並びです。

予定と予定の間に移動を挟む考え方は、移動時間の説明にまとめています。統合した画面で予定の置き場所を迷わず入れる手順は予定の入れ方で扱っており、Mac用のカレンダーアプリとして何ができるかはできることにあります。統合の深さごとに向いている道具を比べたい場合は他のカレンダーとの比較が参考になります。まず自分の目的が表示・空き時間・実体のどの深さかを決め、次に組織の方針と共有の権限を確かめる、という順番で進めると、統合の方法を選び直す回数が減ります。

よくある質問

複数カレンダーの統合をすると、予定は1つのアカウントに移動しますか?

表示の統合であれば移動しません。予定は各アカウントに置かれたままで、アプリが読みに行って1つの画面に並べるだけです。予定が別のアカウントにも複製されるのは、実体の統合を選んだ場合です。空き時間の統合では、中身ではなく「予定あり」の枠だけが写し先に置かれます。

統合した画面に、題名のない塊だけが表示されるのはなぜですか?

そのカレンダーが「予定の表示(時間枠のみ、詳細は非表示)」の権限で共有されている可能性が高いです。この権限では、予定がある時間枠だけが渡され、題名や詳細は渡されません。中身まで見たい場合は、カレンダーの持ち主に「予定の詳細の表示」以上の権限で共有し直してもらいます。

統合した画面から会議の招待に返事をすると、どのアドレスで返事したことになりますか?

招待を受け取ったアカウントとして返事をします。統合した画面は複数のアカウントを並べて見せているだけで、差出人を1つにまとめるわけではありません。仕事の会議は仕事のアカウントに届いた招待から返事をするよう、どのカレンダーの予定かを確かめてから操作します。

会社のカレンダーを個人のGoogleアカウントと統合できないのはなぜですか?

職場や学校のアカウントでは、共有できるかどうかを管理者が決めています。組織が外部への共有を止めている場合、個人のアカウントから会社のカレンダーを見る形の統合はできません。会社でMicrosoft 365を使っている場合は、Outlook on the web に個人のアカウントを1つ追加する方法が用意されています。

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